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HITSHI UEDA × RAFAL BLECHACZ
2005年、ショパンコンクール優勝
ピアニスト
2005@TOKYO

SOAA設立当時、RAFAL BLECHACZ氏と出逢い、その「音」に感銘を受けた
デザイン・フィロソフィーを構築する上で、大切なモチーフのひとつとなった。

都市の楽譜

過去・記憶から未来・創出へ

-過去・記憶-

普段何気なく見ている街並みがある。
子供のころ遊んだ路地、遠足のお菓子を買った駄菓子屋、卒業をした学校。
我々の記憶に残る風景は、優しく安心感を与えてくれる。
しかし、建築には寿命があり、また住み手が替わる。
残念ながらその寿命より早くに取り壊されてしまうこともある。
ある日、記憶の中に当然ある建物が消滅し、空地になっていると、記憶を辿る。
そして何がそこにあったのだろう?と思い出す作業を繰り返す。
そして、
なぜか物悲しく感じることはないだろうか。
それは、音楽にたとえるなら、
音符(Note)の消えた楽譜(Score)のように私は感じる。
地球上の、どの都市や街も、一つ一つの建築 (音符)が連なり
街並み (旋律:Melody)が生まれ、
街並み (旋律:Melody)が連続し都市 (音楽:Music)が形成されている。
それぞれの都市には、特有の地域性(音色:Tone)があり、
美しい都市には美しい楽譜(Score)が存在している。
一つの建物が取り壊され、空地にかわると、
その街全体としてのリズム(Rhythm)が途切れることにより、
不安を感じるのではないだろうか。

-未来・創出-

私は、一旦失った過去の音符(建築)と、
どのような旋律(街並み)が存在したのかを確認しなくてはならない。
そしてより美しい音楽を求め、
一つの音符を注意深く楽譜(設計図)に描き続ける。
そして、美しい未来の創出の為に、
与えられた空間の歴史や、周辺の環境を尊重し、
先端的でありながらも、心地よい建築を創りたいと考えている。
私の作品が、新たな都市の記憶の一部となり、
美しい音楽を奏で、人々に笑顔を与えてくれることを期待している。

建築家 上田 斉